スイスアーミーナイフの使い勝手は、その重さに反比例する。<はしもといわお・アウトドアの掟>

コラム

 
タープの、ある一コマ
 

タープ

 遠くで雷の音が鳴り始めた。少しして、ポツポツと大粒の雨が落ちてきた。ちょうどタープを張り終えようとした時だった。
 「急いで薪を集めよう」
 大号令がかかって、みんないっせいに散らばった。幸いなことに薪になりそうな枯れ枝や倒木はそこらに沢山あった。それ程濡れることもなく全員がタープの下に戻ってきた。
 ビシッ!!ガラガラッッ!近くで雷が鳴った瞬間、滝のような雨が降り始めた。間一髪だった。
 女性が一人混じっていた。ご夫婦で参加していたのだ。不謹慎だが、その女性が雷の音に本当に飛び上がったのには笑ってしまった。ちょっと漫画を見ているようだった。私も雷は苦手だが、飛び上がる程ではない。
 ひどい雨だった。幸いなことに横殴りの雨ではなかったので、タープの下にいれば濡れることはなかった。
 私ともう一人は手早く焚火の用意をした。タープに気をつけ、小さな焚火だった。でも、火が入ると安心するのはなぜだろう。焚火が雨をやませてくれるわけではないのに。
 二十年近く前のことだから、タープも今のように格好のいいものではなかった。ただ長方形の布だった。しかもポールなし。木にでも結びつければいいや。てな、安易さで買った代物だった。三方は木に結びつけ、もう一方は枯れ枝を利用して、ポール代わりに立てただけのものだった。今のようにポールとロープを駆使してしっかりと張ったものではなかった。それでもタープはタープ。その日の我々を助けてくれた。ただし、一方に水溜りがすぐにでき、常にしたからタープを押し上げ、水を流してやらなければならなかった。10回ほどもザバッーと水を流したろうか。やっと雨は小止みになった。
 もう日は暮れ、闇の中で焚火に照らされたタープが誇らしげに輝いていた。