料理の味付けにうるさい人は星の数ほどいるが、食器の後かたづけに一家言ある人は見つからない。<はしもといわお・アウトドアの掟>

コラム

 
放置されたデイパックの謎
 
 鳥仲間と標高1,500m程の山に登った時のことです。といっても、登り初めが1,200mを超えていましたので、たいした山ではありませんでした。デイパックに昼食用のおにぎりと水筒に水、湯沸し用のストーブと小さめのコッフェル。念のための雨具を放り込んだだけの気軽な格好でした。鳥見山行なので首に双眼鏡は忘れませんでしたが。
 もう細くなった沢沿いに道はついていました。オオルリがいきなり出迎えてくれ、高らかに鳴き、美しい瑠璃色を楽しませてくれました。
 「さいさきがいいですね」
 「俺の心がけがいいからね」などと、馬鹿話をしながら少し進むと、それはありました。
 山道から少し入った木の、折れた枝元にまだ新しいデイパックが掛かっていました。近くには誰もいません。どうせすぐ降りてくるのだからと、デイパックを置いて登っていったのでしょうか。それ程気にすることも無く、我々はゆっくりと鳥を愛でながら登っていきました。
 まだ沢に水があるあたりにはミソサザイ、森から抜けようとする辺りにはキビタキ、ビンズイ。頂上近くの草原ではノビタキがしきりに囀っていました。頂上は見晴らしがよく、気分のいい山でした。
 鳥も堪能でき、天気ももってくれて充実した山行でした。それ程の疲れも無く下山してきた我々を迎えたのは、例のデイパックでした。
 「まだあるね。おいていった訳ではないのかね?」
 「しかし、あんなものを忘れていくかね」
 「私の推理によりますと・・・・山菜採りが近くを捜し歩くのに邪魔だったので、とりあえずここに置いていった。しかしどんどん行くうちに別の沢を下ってしまい、またここまで戻ってくるのが面倒になってしまった。きっとあの中には、はじめごろに採った山菜が入っていますよ」
 そういって彼はそっとデイパックの中を覗き込んだ。中にはビニールの安い雨具とバンダナ、それにお昼に食べたのであろうお弁当の空が入っていた。
 「この様子だと、今日忘れていったものではありませんね。昼飯は食っていますから」
 「どうしますかね」
 「まさか遭難したわけではないだろうね。警察に届けよう」
 結局、それは地元の警察に届け、謎は残ったままになってしまいました。

 本格的な山登りのザックの紹介ではありませんので、デイパックやそれに順ずるザックの紹介をしておきます。