初めてタープを張った日には大風が吹く。<はしもといわお・アウトドアの掟>

コラム

 
霜柱を踏みしめる悪魔の手下
 
 何の気なしに出かけた自宅近くの低山でした。吐く息も真っ白な寒い日でした。しかし、風もなく透明な青い空の清清しい日でした。リュックに飲み物だけを入れ、双眼鏡を首にかけ、硬い底のトレッキングシューズで歩き始めました。
 杉林を抜け、雑木林に入るとすぐにカラ類の混群が出迎えてくれました。鳴き声からシジュウカラ、エナガ、メジロはすぐに判りました。双眼鏡を覗き、ピンピンと動き回る小さき者たちを一つ一つ確認していきました。ヤマガラやコゲラも混じっていました。
 「ウンッ?ヒガラだ」
 ヒガラは冬でもこの辺りでは珍しいのです。なんだか得した気分になって、一人で微笑んでしまいました。
 ひとしきり小鳥たちに遊んでもらった後も、ゆっくりとのんびりと登っていきました。数日前に降った雪が一日中日の当たらない場所に、まだ残っていました。
 尾根にとりつき、最後の緩やかな登りにさしかかった時、『ザクッ!』という音を立てて霜柱を踏んでいました。
 よく見ると、行く手の山道にはびっしりと霜柱が立っていました。なんだか踏みしめるのがもったいないような、それでいてザクザクと深い足跡を残したいような。軽く天使と悪魔が戦いましたが、悪魔が勝ってしまいました。
 その、悪魔の手下であるトレッキングシューズの硬い底は、気持ちよく霜柱を踏みしめて行きました。