雨降りのキャンプではタープを張っている人より張らない人のほうがくつろいで見える。<はしもといわお・アウトドアの掟>

コラム

 
雨の日も『木猿』は登る
 

木猿

 今でこそ呼ばれなくなりましたが、ある時代5年ほど<@峰>は『雨男』の称号をいただいていた事があります。
 「また雨ですね」と、含み笑いをしながら私の顔を見る友人。
 「私は雨乞いの神様ですから。どこかに日照りで苦しんでいる国があったら呼んでください」などととぼけるのが常でした。
 しかし、雨の日のテントやタープの設営は大変です。しかも、その頃仲間内ではタープにポールを使わないのが流行でした。ポールやロープは人の動きの邪魔になりますから。タープの主要対角を木のかなり高い部分から引いたロープで固定するのです。そうするとポールも無くロープも殆んど邪魔になりません。そこで活躍するのが『木猿』です。
 余談ですが、『木猿』とはある人を指すのですが、その人物のあだ名ではありません。ただこの瞬間、タープの張り綱を木に結びつけるために木に登る。 その時だけ彼を指して『木猿』と呼ぶのです。でもなぜか普通名詞のようなニュアンスがありました。「そろそろ猿が来るよ」「そろそろ木猿が登るよ」と、同じような使い方なのです。
 閑話休題。雨の日でも『木猿』は木に登ります。雨の日のいでたちはもちろんレインウエアですが、その腰にはしっかりと何重にも束ねたロープ(細引き)が巻かれています。そのロープはもちろん使う時もあるのですが、だいたいはレインウエアの上の裾が木の枝などに引っかからないように、との事のようです。頭にはバンダナ。そして鼻から口にかけても西部劇のようにバンダナをもう一枚巻いています。まるで忍者の覆面のようです。
 その忍者はまるで本物の忍者が刀のつばを踏み台にして塀を登る時のように、適当な薪を登る木に立てかけ、それを足場にヒョイと一番下の枝につかまるのです。あとはその枝に足を掛け、くるりと体を回転させるともう枝の上に乗っています。見事なものです。何分もかからずに仕事を終え、『木猿』は木の幹を抱くようにしてずり降りてくるのです。
 彼のレインウエアには沢山の擦り後や樹脂が着いています。このことを知らない人はただ汚れたレインウエアとしか見ないでしょうが、我々には勲章に見えます。
 こんなに身軽な木登り名人を他に知りません。・・・・今時木登りをする人も珍しいですが・・・・